アイヌの映画がNYのトライベッカ映画祭で受賞!

「AINU MOSIR」という映画(ドラマ)が、ニューヨークのトライベッカ映画祭で審査員特別賞を取ったという素晴らしいニュースのお知らせです。こちらに速報の記事が出てきます。トライベッカ映画祭は、2001年のニューヨークでのテロからの復興を願ってロバート・デ・ニーロら3人が始めた映画祭で、アメリカ国内でも大きな映画祭として有名です。上でリンクを貼った記事にも書いてありますが、国際/ドラマ/コンペのカテゴリーで日本映画が受賞するのは、本作が初めてだそうです。

「アイヌモシ」というアイヌ語の解釈は諸所ありますが、私の映画では「アイヌの大地」と訳しています。アイヌは人間、モシは大地で、「人間の大地」「人間の静かな大地」と訳される事もあります。

「AINU MOSIR」の撮影の舞台は阿寒町です。阿寒湖のマリモが有名で、アイヌコタンというアイヌ関連のお店などが集まったコミュニティもあって私も一度訪れた事があります。

脚本・監督は、北海道出身の福永壮志さん。ちょうど私が撮影を始めた2016年の夏に、福永さんが平取町を来訪されていて、お会いした事もあります。当時、福永さんはニューヨークに住んでおられたので、偶然、同じ町で会うなんて、やっぱり平取は人を惹き寄せる場所だなぁと思っていました。その後、福永さんはフランスのカンヌ映画祭の脚本を支援するプログラムに選出されて、パリに行かれたので、結局ニューヨークでは再会できませんでした。

私が平取で上映会をした2018年の夏に、阿寒で撮影中と新聞に出ていたので、いよいよ完成が近づいてきたなぁと、その時から楽しみにしていました。

ドキュメンタリーとドラマ形式の制作方法は全く異なります。私が今回作ったドキュメンタリーは、撮影・編集・仕上げは、基本全て私が行っていて、予算も私が賄える範囲なので小規模です。台本はなく、大まかに準備した構成に沿って、その時に撮影できる事を文字通りドキュメントします。イベントなどは撮り直しできませんから、一発勝負。失敗したら終わりです。

一方で、ドラマは時間をかけて脚本を練り上げ、役者さんを吟味し、撮影ではカメラ・音声・照明・メイクアップなど様々な分野の専門スタッフが協力し、撮影の時もベストのテイクが撮れるまで行われます。何回も撮れるとはいえ、全ての職人が完璧な瞬間を狙って撮りますから、現場の緊張感はかなり張り詰めています。予算も手間もスタッフも大規模です。一般的にはドラマの方が華やかで、人気があるのではないかと思います。

私もドラマ形式の仕事をした経験は何度かありますが、ドキュメンタリー現場の方が、自分の性格に合っていて好きだったので、これまでドキュメンタリーを中心にした仕事をしてきました。視聴者としては、両方観ますが、どちらかというとドラマの方を好んで観てるかもしれません。

福永さんの撮影中の記事を読んだ時、同じような時期に、ドキュメンタリーとドラマでアイヌの映画が出来るという偶然が結構嬉しかったのですが、今回のような有名な映画祭での受賞は、世界でアイヌが注目される大きなきっかけとなりますので、本当にすごい事だと思っています。トライベッカ映画祭は毎年今頃に行われるので、「AINU MOSIR」を観に行くのを楽しみにしていましたが、今年は新型コロナウィルスの影響で延期となってしまいました。

日本では、秋に公開予定ですので、どうかご注目ください。ドキュメンタリーとドラマ、両方観る事で、様々な事を多角的に感じ、考えていただけたら嬉しいです。